【レビュー】『サンダーボルツ*』は”優しい映画” ー ネタバレ感想やポスクレ、時系列も解説

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※この記事には『サンダーボルツ*』のネタバレが含まれています。ご注意ください。

マーベル・スタジオのMCUシリーズ最新作『サンダーボルツ*』がついに公開された!

今回は『サンダーボルツ*』のネタバレありのあらすじや、感想、気になるポストクレジットシーンや時系列についても紹介していく!

『サンダーボルツ*』あらすじ

物語はエレーナ・ベロワ(フローレンス・ピュー)がある企業に忍び込み、研究室にある証拠や関係者を消していくところから始まる。

彼女はCIA長官のヴァレンティーナ・アレグラ・デ・フォンテーヌ(ジュリア・ルイス=ドレイファス)が隠匿しようとしている情報を抹消する任務を担っていた。

一方のヴァルは、非人道的な人体実験や不法行為の疑惑、そしてエレーナが忍び込んでいた企業のOXE社との危険な計画を秘密裏に進めているのではないかとの疑いで、CIA長官としての弾劾裁判にかけられていた。彼女は自身が潔白であることを証明するため、エレーナやヴァルの助手メル(ジェラルディン・ヴィスワナサン)、そして暗殺者たちに命じて証拠をすべて抹消しようとしていた。

そして最後に残った巨大な地下施設へ向かうよう命令されたエレーナは、そこでエイヴァ・スター/ゴースト(ハナ・ジョン=カーメン)、ジョン・ウォーカー/U.Sエージェント(ワイアット・ラッセル)、アントニア・ドレイコフ/タスクマスター(オルガ・キュリレンコ)と出くわす。

当初はお互いを敵と認識し、激しい戦闘となる。その中で隙を突かれたタスクマスターがゴーストによって頭部に銃弾を打ち込まれ、殺害されてしまう。

戦闘の最中、証拠品の中から現れた謎の男・ボブ(ルイス・プルマン)も加わるが、突如証拠品ルームのシャッターが閉まり、徐々に室温が上昇することで、自分たちが焼却されることを悟る。

彼らは皆ヴァルからの命令で証拠品の抹消を依頼されており、そこで鉢合わせた自分たちもその“証拠品”のひとつであることを理解する。

やむを得ず協力したエレーナたちは、扉前の音波攻撃装置を破壊し、ゴーストが脱出してシャッターを開くことに成功、間一髪で施設からの脱出に成功する。

その後、地上に戻った彼らをヴァルが差し向けた特殊部隊が待ち受けており、彼らは協力して車を奪取する。兵士に気づかれそうになった瞬間、ボブが自ら銃を乱射しながら車から降り、囮となる。

特殊部隊の一斉射撃により蜂の巣にされたと思われたボブだったが、服が破れただけで無傷だった。自らの力を初めて知ったボブは驚きのあまり空高く舞い上がり、気を失って墜落する。

実はボブことロバート・“ボブ”・レイノルズは、かつて「強くなれる」という誘い文句で人体実験「セントリー計画」に参加していた被験者であり、彼の力を目にしたヴァルは即座にボブの確保を命じる。

一方、脱出に成功したエレーナたちは、車内に残された資料から「セントリー計画」の詳細を知る。そこには「太陽の爆発の100万個分」の力やスーツのデザイン案が記されており、ヴァルがとてつもない存在を生み出そうとしていたことが明らかになる。

彼女の計画を阻止するためニューヨークに向かう途中、エレーナの父アレクセイ・ショスタコフ/レッド・ガーディアン(デヴィッド・ハーバー)が運転するリムジンと遭遇するが、特殊部隊に追いつかれてしまう。

一触即発の場に現れたのは、本作で下院議員となっていたバッキー・バーンズ/ウィンター・ソルジャー(セバスチャン・スタン)だった。

装甲車をあっという間に排除したバッキーは、リムジンも破壊して彼らを拘束する。しかしメルから密かに連絡を受けたバッキーは、セントリー計画の危険性を知り、エレーナたちを解放してニューヨークへ向かう。

ニューヨークでは、ヴァルが買収した旧アベンジャーズタワーが「ウォッチタワー」として改修されており、ヴァルは保護したボブに自身の能力を認識させ、彼を究極の存在「セントリー」に仕立て上げる。

ウォッチタワーにたどり着いたエレーナたちは、最上階でセントリーとなったボブとヴァルに対面する。

セントリーはヴァルの命令でエレーナたちを容易く制圧するが、自分に優しくしてくれたエレーナたちを「抹殺」という命令には従わなかった。

セントリーにまったく歯が立たなかったエレーナたちはウォッチタワーを後にし、バラバラになってしまう。

気持ちの限界に達したエレーナは、父アレクセイに家族への思いや「寂しさ」を吐露する。アレクセイも彼女に連絡を取らなかったことを謝罪し、二人は心から和解する。

一方、残されたヴァルはセントリーが命令に従わないことで対立し、隠し持っていた「キルスイッチ」を作動させようとするが、首を掴まれたことで追い詰められる。

そこに現れたメルによってキルスイッチが作動し、セントリーは絶命したかに思われた。

だがその瞬間、彼の中に潜んでいたもう一つの邪悪な人格「ヴォイド」が解き放たれる。

空に浮かぶヴォイドは手をかざすだけで人間を“影”へと消滅させ、攻撃してきたヘリをも墜落させる。

ヘリの墜落によりビルが破壊され、瓦礫が市民を襲う中、エレーナやレッド・ガーディアン、ウィンター・ソルジャー、ゴースト、U.Sエージェントの活躍により死傷者は出なかった。

市民たちからヒーローと称賛され、レッド・ガーディアンはエレーナのかつてのサッカーチーム名を取り、「サンダーボルツ」と名乗る。

一方、空に浮かぶヴォイドの周囲には真っ黒な闇が広がり、市民たちは次々と消滅していく。

その光景を見たエレーナは、かつての優しいボブに戻すため、闇の中へ飛び込む。

ヴォイドの闇の中はトラウマが繰り返される無限地獄となっており、ボブに触れた者たちも幻覚として過去の記憶を見せられていた。

エレーナはレッドルームでの最初の試験で、親友の少女を騙し討ちして殺害させたという記憶、ジョン・ウォーカーは過去の自らの過ちによる苛立ちと、そこで起きた家庭内不和、ヴァルは幼い頃に父親が何者かによって目の前で殺害され、どこかに連れ去られてしまうとという過去を見せられていた。

エレーナも自身のトラウマを何度も繰り返し見せられるが、心の部屋に閉じこもるボブを見つけ出す。

「ここが一番安全だ」と部屋から出ようとしないボブは、過去に父親による家庭内暴力が大きなトラウマとなっていたことや、家族を守りたいという思いからヒーローのように「強くなりたい」と願っていたことが明らかになる。

怯えるボブに対してエレーナは彼に寄り添い、手を取り優しく包み込む。

ヴォイドの抵抗で追い詰められた二人を救ったのは、レッド・ガーディアン、バッキー、ゴースト、U.Sエージェントだった。彼らもまたトラウマを乗り越え、エレーナとボブのもとへたどり着いたのだった。

6人は協力してヴォイドの元へ向かうが、強力な力によりボブ以外は拘束されてしまう。

ボブは闇を乗り越えるためにヴォイドを追い詰めるが、それはヴォイドの罠であり、暴力性に支配されて闇へと染まるボブを、拘束を振りほどいたサンダーボルツの仲間たちが包み込み、闇から救い出す。

全員が気がつくと、ボブは元の穏やかな姿に戻り、ニューヨークを包んでいた闇も消滅、失われた人々も元通りとなる。サンダーボルツは世界の危機を救ったのだった。

平穏が戻る中、元凶であるヴァルを見つけたサンダーボルツたちは、彼女を逮捕しようとするが、それもまたヴァルの策略であった。

倒壊した瓦礫の向こうではマスコミが待ち受けており、マイクの前に立つヴァルはこの状況を利用してサンダーボルツを「ニュー・アベンジャーズ」として紹介し、全てはこのために仕組まれたものであるとして、自らの潔白を宣言するのだった。

『サンダーボルツ*』のポストクレジットシーン

ここまでが『サンダーボルツ*』本編の内容だった。
次はMCUおなじみのポストクレジットシーンについて触れていこう。

まず1つ目はアレクセイのシーン。サンダーボルツがニュー・アベンジャーズとなってから数カ月後と思われ、アレクセイは軽い変装をしてスーパーのシリアル商品棚で主婦に話しかける

シリアルの中にはニュー・アベンジャーズパッケージのものがあり、それを手に取って主婦に勧めるが、主婦は逃げるようにその場を後にし、角を曲がる直前にシリアルを置いて去ってしまう。

アレクセイは劇中でも自らがヒーローとして活躍することを夢見ており、シリアルのパッケージやおまけのおもちゃになることを望んでいた。それが実現したことを示すシーンでもあった。

もうひとつは、次に続くMCU映画への伏線となるシーンだ。

本編から14カ月後、ニュー・アベンジャーズとなったエレーナたちは新しい基地のような場所に集まっている。どうやらヴァルが作った(ことになっている)「ニュー・アベンジャーズ」が、元々のオリジナルの「アベンジャーズ」と名前を巡って対立しているようだ。

サム・ウィルソン(アンソニー・マッキー)のキャプテン・アメリカはニュー・アベンジャーズの存在に反対しているようで、「アベンジャーズ」という名称を商標登録したことも明かされる。

『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』では新たなアベンジャーズの結成が示唆されており、サムにとってニュー・アベンジャーズの存在は寝耳に水だったのだろう。

サムの親友でもあるバッキーは、結果的に彼と対立する形になったことに暗い表情を浮かべる。

そのとき基地に通信が入り、宇宙から謎の宇宙船が確認されたとの報告が届く。

「別次元」から来たとされるその宇宙船には「4」の文字が確認され、ファンタスティック・フォーが向かっていることが示唆される。

ご存知の通り、MCUシリーズは『サンダーボルツ*』の次に『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』の公開を控えており、今回のポストクレジットシーンはその映画に繋がる内容となっていた。

さらにマルチバースを移動していることから、『アベンジャーズ/ドゥームズデイ』や『アベンジャーズ/シークレット・ウォーズ』にも繋がる展開が期待される。

別世界を舞台にしているはずのファンタスティック・フォーが、なぜMCUメインアースである616の宇宙に現れたのかは、次の映画で明かされることになるだろう。

『サンダーボルツ*』の時系列

『サンダーボルツ*』はMCU劇場公開作品としては第36作目となる。

MCUシリーズは基本的に公開順が時系列となっており、『サンダーボルツ*』についても公開前からその想定で考えられていた。

本作では明確に他の作品とのつながりを意識したセリフがあり、そこから本作の時系列も判明している。

映画冒頭シーン、弾劾裁判で自らの潔白を主張するヴァルは、過去に元アメリカ大統領が赤い怪物に変身して大暴れした事件に言及している。

これは本作のひとつ前の映画『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』での、サディアス・ロス(ハリソン・フォード)がレッドハルクへと変身してしまい、ホワイトハウスを破壊した事件のことである。

このセリフからは『サンダーボルツ*』は『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』の後であり、季節としても春以降であることが推測される。また『ブレイブ・ニュー・ワールド』が2027年であることを踏まえると、『サンダーボルツ*』は2027年春以降の出来事となる。

またポストクレジットシーンが「14ヶ月後」であるとの表記もあるため、ファンタスティック・フォーの宇宙船が現れたのは2028年下半期頃であると推測される。

ポストクレジットシーンで1年以上のタイムジャンプがあったこともあり、今後その間に起きた出来事などが他のMCU作品で扱われるのかは気になるところだ。

『サンダーボルツ*』の良い点:トラウマを抱えたキャラクターによる優しい物語

『サンダーボルツ*』の個人的な感想を書いていこうと思う。まずは良い点から。

本作は公開前からも言われていた通り、過去に大きなトラウマを抱えるキャラクターたちの救済や癒やしがテーマとなっており、特にエレーナやセントリーことボブに大きく焦点が当てられている。

映画冒頭で「誰もが孤独」と語っていたエレーナも、終盤でアレクセイとの和解を通じて、ボブを優しく包み込み、サンダーボルツの仲間たちとともに彼を救い出すことに成功する。

こういった仲間の大切さや、過ちを犯した者による救済のような描写は、本作の中でいくつも見られる。

特にエレーナ役のフローレンス・ピューと、ボブ役のルイス・プルマンの演技は、公開前からの評判通り素晴らしかった。ルイス・プルマンの臆病な表情の作り方に加え、セントリーとしてのぎこちないアクション、ヴォイドとしての恐怖の演技など、非常にキャラクターにマッチしていた。

オリジンも丁寧に描かれ、今後も活躍が予定されているボブだけに、本作で心を掴まれたファンも多いことだろう。筆者としてはかなりお気入りのキャラクターになった。

もう一つは、『アベンジャーズ』をオマージュしたようなシーン

本作のクライマックス付近で、ヴォイドにより破壊されたビルの瓦礫がニューヨークの市民に降り注ぎ、それをサンダーボルツが救うシーンが印象的だった。本来は暗殺者であるキャラクターたちが、身を挺して市民の命を守る姿も本作の魅力の一つである。

『アベンジャーズ』でもニューヨークを襲ったチタウリの軍勢から人々を守るアベンジャーズの描写があり、MCU世界では伝説的な出来事として語り継がれている。

舞台が同じニューヨークであることもポイントで、そこで「ニュー・アベンジャーズ結成」が宣言されることも、本作が意図していた展開と言える。

ヒーローがヴィランと派手なアクションを繰り広げる場面もヒーロー映画の醍醐味だが、個人的にはクリストファー・リーヴ版の『スーパーマン』における人命救助のシーンを思い出させ、強く印象に残る場面だった。やっぱり市民を救ってこそのヒーローというものだ。

『サンダーボルツ*』のイマイチな点:一部のキャラの扱い

次は『サンダーボルツ*』のイマイチな点を語っていこうと思う。

まずは一部のキャラクターの扱いが微妙だった点だ。

本作はトラウマを持つキャラクターたちの救済がテーマのひとつだが、全員のトラウマが深く掘り下げられているわけではない

過去が描かれたのは主にエレーナ、ボブ、ジョン・ウォーカー、謎が残ったままだがヴァルの4人である。

これ以外のゴースト、バッキー、アレクセイ、タスクマスターについては、ほとんど触れられていない。

ただ、これらすべてのキャラクターにトラウマ描写を盛り込もうとすれば、約2時間の上映時間では到底足りないのは明白であり、焦点を絞るのは構成上、致し方なかった部分だろう。

またこれらのキャラクターは、過去のMCU作品を観ていればその背景は描かれてきている。

ゴーストは『アントマン&ワスプ』でオリジンが語られ、アレクセイとタスクマスターも『ブラック・ウィドウ』で一応は触れられている。バッキーに関しては言うまでもない。

ただ、本作公開前のインタビューでジャック・シュライアー監督は「MCU新規層でも楽しめる作品」と語っていた。

もちろんその通りではあるが、上記のキャラクターたちを知らない観客にとっては、正直影が薄く映っても仕方がない。ここから過去作を観てもらえれば理想だが、もう少し劇中でも触れてほしかったというのが個人的な感想だ。

次に気になるのは、やはりタスクマスターの扱いだろう。

タスクマスターはプロモーションでもサンダーボルツのメンバーとして扱われていたが、一方で予告編ではその姿がほとんど見られなかったことから、ファンの間では安否を心配する声が多く上がっていた。

その予想は見事に的中し、ゴーストの手によってあっけなく殺害されてしまう。

監督はこの展開について「今後起こることへのインパクト」を意図したと述べていたが、タスクマスターの境遇を考えると、あまりに悲しい最期であった。

多くの命を奪ってきた代償とも言えるが、それはエレーナたちにも当てはまり、タスクマスターと何が違っていたのかが腑に落ちなかった。

こういった演出はDCコミックスの映画『スーサイド・スクワッド』やその続編『ザ・スーサイド・スクワッド』でもあり、少々似たような匂いを感じたのも確かだ。

一方では、MCU版タスクマスターはコミック版から大きく改変されており、性別も変更されている。そうしたことから、今後コミックに近いタスクマスターの登場も予想されている。

いずれにしても、こうした一見“無意味”に見えるキャラクターの使い捨てが、今後のMCU作品で頻発しないことを願うばかりだ。

まとめ:地味に見えた『サンダーボルツ*』がMCUを救う

海外の映画批評サイト「Rotten Tomatoes」では、記事執筆時点で批評家の支持率88%のフレッシュ評価、オーディエンス評価も95%と高い支持を記録している。

フェイズ4以降、鳴かず飛ばずな作品が続いていたMCUシリーズだけに、『サンダーボルツ*』の高評価には手応えを感じているだろう。

本作の公開前は、アイアンマンやキャプテン・アメリカ、ハルクのような派手なヒーローが不在だったこともあり、正直“地味”な作品と見られ、あまり大きな期待は寄せられていなかった。しかし、批評家たちによる軒並みの高評価によって、本作は大きく期待値を上げて公開されることとなった。実際に観客からの評価も上々であり、まさに下馬評を覆す作品となった。このような口コミによって、さらに興行収入を伸ばすことも期待されている。

ジョン・ウォーカーを演じたワイアット・ラッセルも、こうした反応をある程度想定して撮影に臨んでいたと語っており、今ごろガッツポーズを決めているかもしれない。

2025年はMCUシリーズにとっても勝負の年とされており、『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』がまずまずの評価を獲得し、ドラマ『デアデビル:ボーン・アゲイン』も高評価を受けた。そして『サンダーボルツ*』が高い評価を得たことで、ここ数年で掲げてきた「量より質」の方針がついに成果を上げたと言えるだろう。

次に控える映画『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』も、長年ファンが待ち望んできた作品だけに、失敗は許されない。この勢いを保ったまま、2026年・2027年のアベンジャーズ映画へと繋がっていってほしい。

『サンダーボルツ*』は2025年5月2日より劇場公開中だ。

ゆとぴ

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「Ginema-nuts」「トイハコ」の管理人です。アメコミ、特撮が主食の大きなお友達の一人です。

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