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※この記事には『ジュラシック・ワールド/復活の大地』のネタバレが含まれています。ご注意ください。
1993年にスティーブン・スピルバーグ監督によって公開された恐竜映画『ジュラシック・パーク』は、恐竜映画の金字塔として今なお輝いており、老若男女問わず、多くの映画ファン、恐竜ファンの心に残っていることは待ちがないだろう。
多くの人々を恐竜オタクに引きずり込んだ『ジュラシック・パーク』は、2025年に最新作『ジュラシック・ワールド/復活の大地』が公開されたが、この映画、かなりの問題作だ。
今回は『ジュラシック』シリーズの全作視聴はもちろん、子供の頃から恐竜好きなで博物館に通っていたナッツ(熱狂)的な筆者の『ジュラシック・ワールド/復活の大地』の感想レビューを投稿していく。
『ジュラシック・ワールド/復活の大地』Dレックスってというキモザウルス
本作のメインキャラである、ディストータス・レックス。
予告編でもその存在を匂わせるシーンはふんだんに盛り込まれており、多くの恐竜ファンの間で物議を醸した恐竜(?)だった。
劇中においては地球上で最も危険な場所で、”禁断の島”呼ばれるサン・ベール島に生息する巨大生物として登場し、インジェン社が実験によって生まれた突然変異のミュータント恐竜だ。ちなみに「ディストータス」は「歪んだ」という意味である。
このDレックスが登場したのはクライマックスシーンのみだ。
しかも、そのシーンはただ登場人物を襲っていくのみで、『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』に登場したインドミナス・レックスのカモフラージュ能力のような、特殊能力もなし。
特に賢そうな設定もなければ、圧倒的な強さがある印象でもない(図体はでかいが)。
Dレックスの特筆すべき大きな特徴といえば、その見た目だ。
『エイリアン』に登場するゼノモーフを思わせる大きな頭蓋と、4本の前足。ようやく登場したクライマックスシーンでも恐竜ならではの恐さよりも、ヌチャっとした質感と見た目のキモさのみが印象的であった。
そう、ただのキモザウルスだ。
これを恐竜と言っていいのだろうか?もはや「ぼくのかんがえたさいきょうのキョウリュウ」とも言うべき、SF恐竜である。
『ジュラシック』シリーズのファンが求めているのはエイリアン的な異質さや不気味さではなく、太古の昔に地球に存在した恐竜たちが大迫力の映像で暴れまわる姿だ。
誰もこんなキモザウルスを求めていないのだ。『エイリアン』が観たいわけじゃない。
このDレックスは、ある意味では恐竜ファンが恐竜よりも恐れていた、”禁じ手”についに手をしたとも言うべき表現だったとも言える。もはや地球を舞台にしたデカいエイリアンの映画と言っても過言ではないかもしれない。
ミュータント恐竜は全体的にキモザウルス
実はこのDレックス以外にも、ミュータント恐竜は登場している。
ヴェロキラプトルと翼竜を掛け合わせたでような、ミュータドンだ。
このミュータドンが登場人物たちを追い詰めていくシーンがあるのだが、下顎がタプタプで、ややペリカンのような見た目となっている。
恐竜ならではの恐さや美しさではなく、やはりミュータドンについてもエイリアン的要素が強いと筆者は感じ、単純にキモさが勝ってしまっていた。
もちろん好みはあるだろうが、恐竜映画に求めていたものこういったミュータント恐竜ではないのだ。
『ジュラシック・ワールド/復活の大地』描かれない人間の欲望
筆者としてさらに納得が行かないのが、Dレックス誕生の背景や、人間の歪んだ欲望が描かれていないことだ。
今までの『ジュラシック』シリーズにおいて、「人間の歪んだ欲望によって生み出された恐竜達が、、、」というストーリーが根元であった。
一方で本作はそれが詳細には描かれておらず、なんとも感情移入しずらい。
冒頭の研究所の制御システムが故障し、研究者たちが逃げ惑うシーンにおいても、故障の描写やDレックスの覚醒(本作では、常に睡眠薬で眠らされている設定)の繋がりが分かりづらい。
また製薬会社社長が心臓病の治療薬開発のためにチームを編成したことで物語が始まるわけだが、本当に薬の開発が目的なのか、製薬会社社長の見苦しさなども十分には描ききれていなかった。
ただおそらくDレックスやミュータドンの存在がその人間の欲望の末に生まれた悲しきモンスターと思えば納得は行くが、どうしても恐竜ファンとしてはその存在自体が認めづらいというのも事実だ。
恐竜の奇抜な表現とインパクトに終始してしまったのか、人間的な要素の物語が少々お粗末な部分が本作の残念ポイントのひとつでもある。
『ジュラシック・ワールド/復活の大地』レギュラー恐竜達の変化
今まで散々酷評したミュータント恐竜以外にも、本作にはいままでのシリーズに登場してきた恐竜ももちろん登場しているが、この表現にも少々疑問が残る演出となっていた。
生活感ありまくりのTレックス
本作にも大人気恐竜「Tレックス」が現れる。だがなんとへそ天状態(犬猫がへそを出して寝ている様子)で登場している。
眠そう起き上がり、川の水を飲み、登場人物等に気づいてから襲いかかっていくのだが、Tレックスの昼寝は見たくなかった。
ジュラシックシリーズにおいては、絶対的王者かつ恐竜の代表的な存在であるTレックス。
そんなTレックスのへそ天と、人間に襲いかかるまでのタイムロス具合に、なんとも悲しい気持ちになった。
これは『ゴジラ×キングコング:新たなる帝国』で、ゴジラがコロッセオで猫のように眠るシーンや、コングとともに全力ダッシュした以来の衝撃でもある。
ただこれの映画は、架空の生物ゴジラであるから許されることや、モンスター・バースシリーズのトーン、ファンが求めるものと合致していたことでそこまでの批判はされていなかった。(ちなみに『ジュラシック・ワールド/復活の大地』のギャレス・エドワーズ監督は、モンスター・バースシリーズ第1作の『GODZILL ゴジラ』を手掛けている)。
これもDレックスと同じく、観客にインパクトを残したいがための演出だったのかもしれない。
絶対王者のTレックスがそのようなペットのような可愛らしい姿を晒してしまっては、映画全体の締りが無くなってしまうと感じた。
魅力無しの噛ませラプトル
こちらもシリーズおなじみの恐竜であるラプトルだが、本作においては限定的な登場である。
もはや「いまのラプトル、、だったよね?」という程度。
登場人物を背後から襲おうとするシーンがあるのだが、突如翼竜に1匹が食われ登場人物は助かるというもの。
あのラプトルの賢さや、群れのチームワークすら本作では見ることができなかった(明らかに噛ませ犬だったと言える)。
『ジュラシック・ワールド/復活の大地』恐竜らしさへの疑問
『ジュラシック・ワールド/復活の大地』をはじめ、『ジュラシック・パーク』シリーズに登場するすべての恐竜は学者が様々な証拠や化石などから推測で描いてきたもので、実際の恐竜がどういった姿だったのかは未だに明確にはなっていない。もちろん映画のファンである我々も本来の恐竜の姿は知らない。
ただ、SF映画にそういったことを持ち込むのはナンセンスだ。
単純に恐竜好きとして、本作で感じたいくつかの違和感を列挙していこうと思う。
•共闘するモササウルスとスピノサウルス:あれだけ種として離れた恐竜が、環境の変化とは言え、共闘する姿は謎がのこる。
•なぜか人間に懐く子供のアクイロプス:本来群れで生きるはずの種がなぜ1匹で、簡単に人間に懐くのか。
•草食なのにお菓子を食うアクイロプス:グミのようなお菓子を子供からもらっていたが、草食じゃなかったか?動物愛護団体よ、いまこそ騒げ。
•尻尾にまで背鰭がついたスピノサウルス:恐竜の解釈はどの図鑑でも違うものだが、尻尾にまで背鰭が付いていることには違和感が残る。
•ここはアバターの世界か?ティタノサウルスの異世界感:
群れの同種同士でティタノサウルスがイチャコラ(頬をすりすり)するようなシーンでは、その動きに恐竜感がなかった。尻尾が異様に長いことは有名だが、その描き方の動きがどこかアバターの世界観であった。(ちなみに『アバター』はまもなく新作映画が公開予定だったりする)
•恐竜の動物的描写の少なさ:群れで仲間を守ったり、異種同士の戦いなど恐竜の動物的描写が少なく、かつて地球にいた生物としての感情移入が難しかった。
『ジュラシック・ワールド/復活の大地』にクソガキがいない
『ジュラシック』シリーズといえば、余計なことをして危険を増やしたりするクソガキキャラの登場するのがおなじみだ。
しかし本作では、一見クソガキかと思える20歳前後の男も、結局は良いやつであり、登場する幼女にいたっては、賢く勇敢。大人達を救うようなシーンすらあった。
クソガキがいないことによって、パニック感やハラハラ感が薄くなったような印象だ。パニック映画においてこういった良くも悪くも純粋な子どもというのはベタでありながらも、おなじみの演出であり、物語上や映画のトーンとして難しくとも、人間側の不確定要素キャラとしては、本作でも描いておいても良かったのではないかと感じた。
『ジュラシック・ワールド/復活の大地』主人公声優の棒読み
これは言わずもがな。毎度のことであるが、主人公の声優が棒読みであった。
スカーレット・ヨハンソン演じるゾーラ・ベネットの声優を担当したのは女優の松本若菜、ジョナサン・ベイリー演じるヘンリー・ルーミス博士には三代目J SOUL BROTHERSの岩田剛典、ルナ・ブレイズ演じるルーベン・デルガドには吉川愛が声優を務めていた。
洋画ファンが嫌ういわゆる「芸能人声優」であり、声優としての演技や作品のキャラクターに合っていれば問題ないのだが、残念ながら本作においては悪い方向に作用してしまっている。
特に主人公ゾーラはクールなキャラクターと言うこともあり低めの声は非常に合っていた反面、他のキャラクターの声優が大御所ということもあり、余計棒読み感が際立ってしまった。
スカーレット・ヨハンソンといえばマーベル・スタジオのMCUシリーズで米倉涼子が声優を担当してきたこともあり、マーベルファンの間ではその声もおなじみではあるが、本作では制作スタジオが違うためか、マーベルと同じキャスティングとはならなかった。
直近で公開された洋画であるDCスタジオの『スーパーマン』や、マーベルの『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』のメインキャラクターたちは本職の声優が務めており、芸能人声優については一部の小さい出番しか無いキャラクターに限定されていたこともファンの間では評価する声もあったため、『ジュラシック・ワールド/復活の大地』はタイミング的にも悪目立ちしてしまっている印象を受けた。
『ジュラシック・ワールド/復活の大地』パニックホラー感の再来は評価できる
『ジュラシック・ワールド/復活の大地』の良かったポイントを挙げるとすれば見出しの内容に尽きる。
直近の作品と比べると、やはり大人向けでありパニック感はしっかりあったと思う。
ファンがジュラシックシリーズに求めている一つはこのパニック感であったとしみじみと感じた。
ただ、グロ描写は少なく、登場人物が少ないので喰われる人数も少ない。
何より最後に皆んなの身代わりとなりDレックスに喰われたはずの男が生きていたシーンには興醒めした。
近年は『エイリアン』や『プレデター』新作が公開され、一部のホラー映画は日本でもカルト的な人気を得ることもある。表現は時代とともに変わっていくものだが、恐竜パニック映画の代表である『ジュラシック・パーク』シリーズが、今度どのような展開を迎えていくのかは注目した。
『ジュラシック・ワールド/復活の大地』それでも興行収入は好調
恐竜ファンの間で物議を醸す演出はあったといえども、数字は正直である。
記事執筆時点での『ジュラシック・ワールド/復活の大地』の世界興行収入は8億ドルを突破しており、同時期に公開された『スーパーマン』(5億7800万ドル)と、『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』(4億3400万ドル)と比べると、大きくライバルを引き離していることがうかがえる。
またアメリカ国内の歴代興行収入ランキングトップ100で92位に食い込んだとの情報もある。
今年のヒット作である実写版『リロ&スティッチ』(10億ドル)や、『マインクラフト/ザ・ムービー』(9億5510万ドル)に次ぐ、2025年最大のヒット作であるとも言えるだろう。
海外の映画批評サイト「ロッテントマト」では映画批評家からの支持率が50%とまずまずな結果だが、オーディエンス評価は71%と高めな支持率を獲得している。
おそらくこのまま行けばさらなる続編が制作される可能性は高くなっていくだろう。
ただ本作で見せたミュータント恐竜たちのような、奇抜な演出が今後どこまで拡大していくのかは、シリーズを長く保つためにも重要な要素になることは間違いない。恐竜ファンが望むような『ジュラシック・パーク』シリーズを展開していくことができるのか、さらなる展開には注目をしておこう。
次回作においては、太古の地球に実在した恐竜たちを存分に活かしたパニック感万歳の作品を期待したい。
『ジュラシック・ワールド/復活の大地』は2025年8月8日より劇場公開中だ。

映画情報サイト「Ginema-nuts(ギネマナッツ)」の編集部です。
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