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この記事には『プレデター:バッドランド』のネタバレが含まれています。ご注意ください。
1987年にアーノルド・シュワルツェネッガー主演で公開された『プレデター』は、後年になっても多くのシリーズが展開されており、旧20世紀FOXがウォルト・ディズニー社に買収されてからは、初の配信ドラマやアニメ作品など、幅広い展開をしている。
そして2025年に最新作『プレデター:バッドランド』が公開される。
ドラマ『プレデター:ザ・プレイ』で高評価を得たダン・トラクテンバーグ監督が指揮した本作は、新たなシリーズの始まりを予感させる一作となっており、新時代のプレデターを目指した意欲作だ。
今回はこの『プレデター:バッドランド』の試写会にお邪魔させていただいたので、ネタバレありの感想レビューをしていく。
『プレデター:バッドランド』はめっちゃヒーロー映画
はじめに言っておきます。
この映画は正直これは完全にヒーロー映画です。オリジンを描いた王道のヒーロー映画。本当にありがとうございました。
まさかプレデターでこのような感覚になるとは思わなかった。映画の最初にファンファーレとともに「MARVEL STUDIOS」のロゴが出てもおかしくない。
それぐらい本作はヒーロー映画やっていた。
一方でプレデターらしいスプラッター演出や恐怖感はほとんど無いため、そこについては期待外れになるかもしれない。理由については以降の記事で語っているのでぜひどうぞ。
『プレデター:バッドランド』のざっくりな内容
本作の物語の構成は非常にシンプル。おそらくこれまで『プレデター』シリーズを観たことがない観客でも楽しめるように、非常に観やすい映画となっている。
宣伝もされているとおり、本作の主人公はプレデターそのものであり、シリーズとしても初。
デク(ディミトリウス・シュスター=コロアマタンギ)はヤウージャ族の一人前の戦士になるため、兄とともに訓練に励むが負け続き。それでも諦めないデクは最後に試練として不死身のモンスター”カリスク”を狩ることを決める。
一方で彼の弱さを許さない父は一族の恥としてデクを処刑しようとする。しかしデクは兄によって救出され、宇宙船へと逃される。
そして兄は自分の代わりに父に首をはねられてしまうのだった。
壮絶な兄の最期を目にしたデクは、宇宙船でカリスクが棲む惑星<バッドランド>に不時着する。
そこでウェイランド・ユタニ社のアンドロイドで、下半身を失ったティア(エル・ファニング)と出会い、過去の『プレデター』シリーズではあり得なかった、プレデター×アンドロイドのバディものとして物語が進んでいく。
デクの成長物語としても存分に楽しむことができる構成となっており、日本人にもウケが良い作品になっているのが本作の魅力だ。
『プレデター:バッドランド』、ジャンルが変わってるやん
『プレデター』といえば、地球に襲来した未知の異星人たちによって人間たちが無惨に殺戮されていく様子が描かれた、いわばパニックホラー映画であり、『ジョーズ』や『エイリアン』とも並ぶハリウッドの代表的な映画シリーズだ。
基本的にプレデターは恐怖の対象であり、人間たちは弱きものとして狩られていく。それが『プレデター』シリーズの醍醐味だった。
しかし本作では舞台が別の惑星であり、さらには人間も登場しないことから、血なまぐさい演出はほとんど皆無だ。プレデター同士の戦いによって流血シーンなどはあるが、彼らの血は蛍光グリーンであることからも、そこまでグロさは無い。
またティアを始めとしたアンドロイドたちも見た目は人間でも中身はロボット。デクに次々に破壊されていくシーンは今までの『プレデター』を感じさせるものではあるが、流血シーンは全く無い。
これを往年のファンたちがどのように評価するかは気になるが、少なくとも新規の観客にはかなりハードルが低いものとなっている。
ひょっとするとディズニー社傘下の作品であることから、スプラッター演出が抑えられたのではないかと推測してしまいそうだが、おそらく違うだろう。
マーベル・スタジオ作品では多少なりともグロ描写は許容(『デッドプール&ウルヴァリン』『デアデビル:ボーン・アゲイン』など)されており、『エイリアン』シリーズについても同様だ。
『プレデター』については今後のさらなるシリーズの拡大のために、より多くの観客に受け入れられる演出が採用された形である。今回はそれがうまく作用していたといえるだろう。
(今年はジャンル変更が急カーブすぎて日本での上映が中止になった映画(殺戮少女ロボ)もあるので、一安心よ)
それでも欲しい”プレデター感”
先述した内容では、『プレデター:バッドランド』のジャンルの方向転換について肯定的に評価してきたが、やはりこれまでの『プレデター』のような恐怖もほしいところではある。
非常に観やすい『バッドランド』ではあるが、このテイストが今後も続いていば、どこかで物足りなさを感じてくる気がしている。
「昔にプレデターみたいなグロが観たい」という懐古的な要望は高確率で出てくるはずだ。原点回帰は長く続くシリーズものであるほど避けては通れない。
今回の『バッドランド』の方向性を保ちつつも、どのようにしてこの”プレデター感”も取り入れていくのかが、新シリーズの肝になっていくかもしれない。
プレデターが”捕食者”から”守護者”へ
『プレデター:バットランド』のテーマのひとつとして、「守護者」というものがある(厳密にこのワードが出るわけではないが)。
本作の途中、ティアはデクに地球の狼の話をする。
狼は群れをなして狩りをし、そのなかに「アルファ」と呼ばれるリーダーのような狼が存在する。
デクは「アルファ」が最も”狩る者”であるのかと聞くが、ティアは「アルファ」が必ずしも最も狩りができる強い存在ではなく、一族を守るものが「アルファ」だと話す。
一族で最も強い戦士を目指すデクは、狼の話をどこか心の片隅に置くような様子を見せるのであった。
”プレデター”には「捕食者」という意味が含まれており、まさに本シリーズに登場するヤウージャ族そのものを指している言葉である。
しかしデクはこのプレデター像とは異なり、狩る姿よりも守られる姿のほうが際立っている。
父からデクを守った兄、アンドロイドからデクを逃がしたティア、そして終盤では自ら飼い慣らしたクリーチャーにも、デクに放たれたビームを身代わりに受けて守られている。
こういった経験がデクに心境の変化をもたらし、「捕食者」ではなく「守護者」としての使命を芽生えさせたのだ。そしてそれが最終的に父への仇を討つ原動力にもなっている。
この構成は個人的にはかなり熱く、こういった成長譚をプレデターで見れるとは思っていなかった。
往年の『プレデター』ファンがどのように感じるかはわからないが、筆者と同じようにヒーロー好き映画ファンにはぜひともおすすめしたい映画となっていた。
デク、お前ちょっとかわいいの何なん
ここまで書いてきた通り、本作の主人公デクは純粋に誇り高き戦士を目指すただの青年プレデターだ。
まるでプロ野球選手を目指す少年かのように純粋なデクの表情は忘れられない。
そんな彼が慕っていた兄が、目の前で父親に殺害されるという経験をし、本当の戦士へと成長していく姿はもはやジャンプの主人公だ。見た目はクリーチャーでも、かなり人間くさいところがこの「デク」というキャラクターの魅力である。
さらに本作の見どころの一つにはティアとの絡みにもある。
印象に残っているのはティアが少し考えごとをしているところにデクが声をかけるのだが、彼女は聞こえなかったのか無視。それに対して「おい、返事ぐらいしろ」と、まるで人間の親みたいな小言を言うシーンはほっこりする。
プレデターにこんなセリフを言わすことができるのも、今回の大幅なジャンル変更の賜物だろう。
近年のSF映画では、本来恐ろしい存在のはずのキャラクターに、人間くさかったり、可愛かったりする要素を足すことで人気を出す演出がよくある。個人的には『ヴェノム』シリーズのヴェノムや、モンスターバースシリーズのゴジラとコングが思い浮かぶ。
まさかプレデターでこんな感情を抱くなんて思いもよらなかった。このデク、可愛いしもっと成長した姿を観たいぞマジで。
アクションのバリエーションは豊富
『プレデター:バッドランド』ではいままでのように人間を相手に無双するプレデターが描かれるのではなく、未知のクリーチャーたちに苦戦するプレデターが主軸となっている。
多種多様な生き物が登場することで、必然的にデクのアクションも幅が広くなるのが本作の見どころである。
無数に伸びる触手を持つ木の化物、爆発するイモムシ、毒の針を飛ばす植物、某ゲームに登場しそうな翼竜、カミソリ草、謎の液体を吐くヌメヌメ蛇、鎧を纏ったようなサイっぽい巨大生物など、多くのクリーチャーが登場している。
これらを最初は困惑しながらも、機転を利かしながら狩っていくデクのアクションは面白い。またこれらのアクションがテンポよく展開されていくのも魅力的だ。
<バッドランド>という舞台設定をうまく物語の構成に落とし込んだアクションだったとも言えるだろう。
『プレデター:バッドランド』気になるクロスオーバー要素と時系列
本作は公開前からクロスオーバー要素が期待されており、特にティアなどのアンドロイドを製造した企業が「ウェイランド・ユタニ」であることが明らかになっている。彼女らの瞳にもウェイランド・ユタニのロゴマークが表示されるなど、印象的に強調されている。
ウェイランド・ユタニは主に『エイリアン』シリーズに存在する巨大企業で、目的のためなら人命すらも軽んじ、ゼノモーフの捕獲なども行っている超利益主義の企業だ。
『バッドランド』においては地球の人間の寿命を伸ばすなどの研究で必要なサンプルであるカリスクを捕獲するために別の惑星にアンドロイドたちを派遣している。直接的な組織の人間の登場はないが、「マザー」と呼ばれる中枢AIなどを通して、アンドロイドたちに命令を下していると思われる。
これ以外のクロスオーバー要素はほとんどなく、少なくとも地球や人間が存在していることだけはセリフの中から確認されている。
そのため本作は他の『プレデター』シリーズとのつながりも明確ではない。参考までにこれまでの『プレデター』シリーズを公開順に並べておく。
・『プレデター2』(1990年1月12日公開)
・『エイリアンVS. プレデター』(2004年12月18日公開)
・『AVP2 エイリアンズVS.プレデター』(2007年12月28日公開)
・『プレデターズ』(2010年7月10日公開)
・『ザ・プレデター』(2018年9月14日公開)
・『プレデター:ザ・プレイ』(2022年8月5日配信)
・『プレデター:最凶頂上決戦』(2025年6月6日配信)
・『プレデター:バッドランド』(2025年11月7日公開)
※すべて日本公開日
『AVP』2作品をどの時系列に入れるかどうかは諸説ある。一部では矛盾も出ていることから、正史として扱わないことも多い。
『プレデター』側では『AVP』を正史として扱っても問題はないようだが、それでもつながり自体は薄いように感じる。
そのため下記の時系列順ではその2作品を抜いた順番を並べていく。
※オムニバス形式のため複数年代
『プレデター:ザ・プレイ』(1719年頃)
『プレデター』(1987年頃)
『プレデター2』(1997年頃)
『ザ・プレデター』(2018年頃)
『プレデターズ』(2019年頃)
『プレデター:バッドランド』(近未来)
他作品とのつながりを示唆する演出はほぼ無い『バッドランド』については近未来という設定からも、この時系列に含めても大きな問題はなさそうだ。
そしてウェイランド・ユタニの存在が今後『エイリアン』シリーズとのクロスオーバーを示唆しているのかどうかだろう。いまのところ明言はされていないが、ダン・トラクテンバーグ監督はそれを匂わすような発言はしている。
MCUシリーズを展開するマーベル・スタジオを擁するディズニー社グループなだけに、人気IPでもある『プレデター』と『エイリアン』がクロスオーバーをするシェアードユニバースには期待が集まる。
プレデター側はいままでとは異なるデクというヒーロー的なキャラクターが誕生したこともあり、以前の2作品とは大きく異なるテイストの対決も可能だろう。
『バッドランド』がどこまで興行収入を伸ばすことができるか次第で、今後のシリーズ展開の予想もできてくるため動向には注目だ。
まとめ:『プレデター:バッドランド』は初心者こそ観るべき映画
『プレデター:バッドランド』は個人的に公開前から面白そうなコンセプトだったこともあり、実際に映画の内容も十分楽しめた。
全体的に観やすい構成・感情移入しやすい魅力的なキャラクター・豊富なアクション・今後の展開への期待など、大衆映画としては優秀なぐらい欲しい要素が詰め込まれていた。
グロい描写やスプラッター、ジャンプスケア的な演出もほとんど無いため、幅広い層にアプローチしやすいのも本作の魅力だ。
正直なところ、筆者自身はそこまでプレデターに詳しいわけではなかったのだが、問題なく楽しむことができた。
上映後に映画館が明るくなったときの満足感はしっかりあることを保証する。
すこしでも琴線にかかりそうならば、ぜひ劇場に足を運んで、新たなプレデター体験をしてもらいたい。
『プレデター:バッドランド』は2025年11月7日(金)より全国公開予定だ。

映画情報サイト「Ginema-nuts(ギネマナッツ)」の編集部です。
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